シリコンバレー奮戦記(Startupへ1)

Aki Machida

50歳の決断で不満を捨てて、不安いっぱいのスタートアップに転職しました。



スタートアップに転職

マイクロンに居たマーケティングの日本人副社長も、分社の話が出た途端、いつの間にか居なくなっていました。ツテをたどると会社の裏のスタートアップに副社長として働いているではありませんか。町田くんに是非来てもらいたいとのことでしたので、彼の退職時の契約上、彼の方から連絡して引き抜くことができないので、HiringManagerをきちんと通してもらいました。


そして遂に、なんと50歳でスタートアップに転職する事になったのです。


その会社の試作機を見て感動しました。いわば機械式のテレビです。複数のブルーレーザをラスタースキャンしてRGB蛍光体を印刷したシートを励起し、フルカラーの動画を表現します。会社名はステルスモードでSPUDNIK。スプートニクと良く間違えられました。テレビはカウチポテトで観るものなので、ポテトの別名、SPUD、をエレクトロニクス化したネーミングにしたということでした。


このとき、新しもの好きのマーケティング魂がメラメラと燃え上がってしまったのです。第1世代を世に出す時に社名変更してPRYSMになりました。移民局や電話で社名を告げるとPRISONに聞こえるので、思わぬ反応が良く起きました。


上の写真は第2世代の製品で、内部は下図の様になっており、25インチのベゼルのないディスプレーをタイル状に並べることで、最大220インチまで構成できます。私は第3世代が世に出るまで10年間もPRYSMに在籍していました。


日系XTECH 事例に学ぶ(後編)信じられるのは自分だけ

家のローンも抱えたままマイクロンから飛び出しましたから、スタートアップへの転職は大きな不安がありました。スタートアップには ITやERP、生産システムや出張手配などのリソースも少ないので、本当に忙しいです。この忙しさも24-7どころではありません。25-8です。ですが絶対にゼロイチをやってやろうと頑張りますから、やらないことへのプレッシャーが半端ないです。他人任せはありえません。もう、これは熱中してアドレナリンを出しながらやるしかなかったです。


シリコンバレーでも有名なアクセレレータであるYコンビネータの紹介YouTubeでAirB&BのCEOが朝8時から真夜中まで毎日休み無くやったんだと言ってます。参考まで。https://www.youtube.com/ycombinator


実はスタートアップの生活はそれほど貧窮しているわけではありませんでした。シリーズA直後に入社しましたから、福利厚生などは人事サービスの外注である TRINET が担当してくれます。401Kの企業マッチングなどはありません。その代わりのリテンションプログラムというか、インセンティブである、そこそこのストックオプションをもらいました。いわゆる単なる紙ッペらです。万が一当たれば、本当に億万長者です。


ネタバレですが10年間も楽しかった仕事は、スケーリング時の落とし穴(事業が拡大する時に部材調達が増え、売れないとパイプライン在庫が増えて、運転資金が足りなくなる現象)に嵌って倒産してしまい、文字通り、標準株 (CommonStock) のストックオプションは紙っぺらになってしまいました。みなさんもスタートアップに呼ばれる話が遅かれ早かれ出てくるのではないかと思います。コモンストックという餌に釣れられて、こき使われた後、仮にM&Aという立派なEXITになっても、Valuation以下で買収となると、コモンストックは単なる紙ッペラになるので、あまり期待しないほうがいいです。優先株(Preferred)ならM&Aでも買い取ってくれるでしょう。ただし、夢のような係数が掛かった金額には程遠いです。つまり、M&Aでホッとできるのは創業者やVCのみで、コモンストックだけもらった従業員は次の会社でも働けるくらいのメリットしかありません。それでも場合によってはAcq-Hiringといって、優秀な従業員だけを引き抜くためのM&Aもありますから、首は洗っておいたほうがいいです。また、ひどい時はIP獲得だけのM&Aもあり、この場合は事業所や事業部化された後にそっくりお取り潰しにあいます。


シリーズBがクローズできると急に金回りが良くなります。出張も、行き放題。私の担当部材であるディスプレーのパネルまわりは材料だけでなく、治具や製造装置の多数が日本からの調達ですから、毎月日本に行って、POCや部材の手配をしながら、投資家探しもしてました。


というわけでUNITEDは毎年 10万マイルを飛び、毎年1KのStatusで、生涯渡航距離も100万マイルを優に越えました。(100万マイルを終えるとライフタイムプレミアとなり、配偶者も同じステータスがもらえますので、国際便のときは私が居なくてもカミさんと子ども一人はラウンジを使えますし、着席もエコノミープラスゾーンが予約できます)


お金が足りなくなると、間接部門の人を切ったり、出張・経費制限がかかるのも常です。そしてまた、つなぎ融資などが入るとすぐ浪費に近いイベントや展示会への参加が行われます。全く四半期ごとにローラコースターです。


https://www.amazon.co.jp/%E6%8A%95%E8%B3%87%E5%AE%B6%E3%81%A8%E8%B5%B7%E6%A5%AD%E5%AE%B6-%E5%B1%B1%E6%9C%AC-%E6%95%8F%E8%A1%8C/dp/4295405965

  • ISBN-10 ‏ : ‎ 4295405965
  • ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4295405962


また、起業家マインドにも触れることが出来ましてた。ChatWork創業者の山本さんが書いた本を読むと、まさにこういうことだったよなぁ、と思います。是非読んでみてください。読み放題Kindle版は無料です。


会社が移り変わってゆく波に揉まれて、遂に決断した頃のメンタリティーは日経エレクトロニクスの記事になっています。    https://xtech.nikkei.com/dm/article/FEATURE/20120822/235096/?P=2


精神論になりますけれど、専門知識や語学力、職務能力がいくらあっても、非認知能力(自立心、社会性・感情制御・実行実践意欲など)がないと社会では役に立たないそうです。私は多摩川のそばに住んでいたので、週末はガキ大将で泥だらけで遊びまくっていましたし、運動は体育会スキー部の距離競技でしたから、根性も忍耐も十分だったのだと思います。


特に大学4年生になる時、現在ミシン会社の社長の先輩から、玉川のモットー以外に、自分のポリシーを持て、と言われて4つのキーワードのポリシーを胸に刻みました。それはまた別のブログに書き留めます。



PRYSMで7年過ぎた頃から、スケーリングするということで、台湾・中国のメーカに技術移転をし、製造委託をするということになりました。日本によく行ってましたから、ついでに台湾と中国も面倒見てくれということになり、開発購買役から生産技術の責務も負わされました。品質管理のおまけ付きです。


シリコンバレー奮戦記(StartUp2)に続きます。そちらでは製品の構造と技術解説をしながら、問題点と解決方法を織り交ぜながら紹介いたします。




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最初は履歴書だけでもLinkedInだけでも結構です。