Aki Machida
日本の大企業に居るアメリカ人の方による米国スタートアップ向け講義
これをベースに私の経験を加味し、私のブログとしました

■ 講演タイトル:初めての大手日本企業との付き合い方
(会計年度、POC、現地体制、エチケット)
講義そのものは日本の大企業に居るアメリカ人の方による米国スタートアップ向け講義だったのですが、この内容は日本のスタートアップの方々が日本の大企業と付き合う場合にも大変有用と判断し、ここにブログとして残すことにしました。
■ 概要:本講義はあくまでも個人の経験に基づくものです
(筆者は日米の大手企業とUSのスタートアップでの就業経験があります)
o 日本の4月〜3月という統一された会計年度
o 上期(4〜9月)と下期(10〜3月)の意味
o 現地パートナー戦略
o 既存文化の重視
o 会議マナー
o 法務およびPOC(概念実証)の進め方
米国のビジネスサイクル(主としてカレンダーイヤー)と対比しながら、日本では「四季に則った時間軸」がビジネス成功を左右することを意識してください。
■ 内容紹介
1. まず、講師の背景
町田 晶弘、Aki Machida
外資系大手半導体メーカの営業・製品開発マーケティングとして、日本市場の開拓に貢献
日本市場投入新製品は世界でも受け入れられ、世界を4回変えた実績
米国・欧州・東南アジア市場における販促経験も豊富
シリコンバレーに25年在住し、USのスタートアップに12年在籍
3年間フジフイルムにてオープンイノベーション活動を推進
日米の大手企業での経験と、米国でのスタートアップでの実務経験を持つ。
現在はその経験と知見を活かしたコンサルタントとして3年、日米の複数企業支援中
2. 日本の会計年度の本質
日本は4月〜3月で国家的にほぼ統一されている
上期(上半期):4〜9月
下期(下半期):10〜3月
意味
上期:今年の予算執行+来年度検討開始
下期:リソース制約、意思決定フェーズ
重要ポイント
予算申請:11〜12月
9月までにポジショニング必須
後出し提案はほぼ不可能
3. 協業に関する四半期別戦略
● 4〜6月(上期前半)
初回接触に最適
技術紹介・ペーパー評価
対面訪問が有効
● 7〜9月(上期後半)
公開公募なら候補が絞られる(約5社)
一本釣りの場合でも厳しい精査が始まる
実機評価・カスタマイズ
9月時点で進捗無しならその後の進展は厳しい
● 10〜12月(下期前半)
MOU・LOI・POC検討
候補は1〜2社に
追加参入は困難
● 1〜3月(下期後半)
NDA締結・リソース確定
3月は極めて忙しい
新規ミーティングは難しい
つまり、10月までにPOCの流れに乗っていない案件は見捨てられている可能性が高い
4. NDA
相手のNDAに署名する方が早い。と言っても1か月は覚悟。
日米間での契約なら仲裁国をシンガポール推奨
自社NDAの場合:4〜6ヶ月は覚悟。信じられないほど遅いので我慢するか、先方のNDAにする
必ず法務(Legal)のチェックを入れるように。
製造責任保証などの条項は出来るだけ飲まないように。最悪でも有限保証に。さもなくば。。。。
有効・更新期間が1年だけなど頻繁だと後で煩雑に。
契約終了・破棄後の守秘義務期間は長くとも5年に。未来永劫は避ける(5年以上先は誰もわからない)。
DocuSignが普及してきたが、印鑑が必要な場合が多い。
ハードコピーの時は各ページにイニシャル。ページ間に割印や袋とじ必要など、形式にこだわる場合も。
5. 日本進出の基本戦略:ハードルが相当高い
日本での法人形態
KK(株式会社)
→ 大企業向けに有利
GK(合同会社:LLC)
→ 低コスト・柔軟(ただしGoogleでさえLLC)
→ 大型案件では弱い可能性
会社の印鑑登録必要。
現地パートナー必須
(理想は基本的に英語が出来て、5年以上の海外滞在をした、文化の深層理解が出来る人を選ぶこと)
文化・ネットワーク・法規対応のためのリソース確保
(理想は日米の両方のCPA資格や簿記が出来る方)
6. POC戦略
無償POCは避ける
無料=お互いのコミット不足
NRE文化が無い(相手の資産になる可能性。しかも稟議にとても時間がかかる)
有償化とすることでお互いの真剣度が上がる
4人のバイヤーを特定しておくこと。(StrategicSelling参照)
例として、部品ならば、単価(最高10万円まで部長決済で済むなど)でNRE金額相当数の注文をもらう。
スタートアップの場合は材料入手やスタッフの準備があるので、出来ればその分は前金でお願いする。
かなり勇気のいる交渉だが、かつてのSONYの盛田氏でさえ創業初期にはこれをやってのけた。
大手企業担当者は、企業運営に必須の財務負担や入金計画について理解していないケースが多い。
注文書をきちんともらう。支払い条件は30日以内で交渉する。手形など現在ではありえない。
支払い条件3か月等はお断りする。破談になるようなら真剣ではないと分かる。
7. 実務準備(海外メーカの場合)
日本滞在計画
通訳・書紀担当(出来れば帯同するか、業界に通じたニュートラルな方を雇う)
逐次通訳の間合いに慣れておくこと
ServiceLevelAgreement(サポート体制)
修理や保守の旅費などは顧客持ちになるよう取り決めておくこと
8. 日本特有(20世紀・昭和)の価値観
既存文化の重視(経営陣は年輩の方が多いので、事前勉強しておくこと)
長期関係重視(日本での長期という意味は最低3年。アメリカだと3か月?)
継続改善(カイゼン)。大手企業はPDCAが当たり前のように行われ、KPIが定期的にレビューされている。
企業文化の浅いスタートアップはこうした品質管理活動に親しんでいないケースも多々ある。
原因分析と再発防止策(きちんとした歯止めを求められる)
9. 意思決定の本質
Katachi(形):tidiness
提案内容と実態の一致が必須
ズレ=信頼崩壊
判断基準
技術優位よりも:信頼や組織との相性
前向きに検討すると言われた時は期待してはいけない。殆どの場合後回しにされるか棚上げされる。
10. 商流(ディストリビューター)
商社・代理店経由が一般的
特に小規模企業には有効
マージン交渉は必須(大口は5%、小口は20%、トータル15%等)
特約店契約は複雑なので、経験のある現地パートナーを選ぶ
11. 支援機関
JETRO:Palo Alto / SF / 赤坂に拠点
無料支援あり:法務、オフィス、設立支援、コンサル紹介
12. 会議マナー(超重要)
座席:アメリカ式にバラバラに座らないこと。机を隔てて招待側と招待された側に分かれる
招待された側の上席は上座(ドアから遠い席)へ
(基本は奥だが、景色が良い場所なら、景色が良く見える方が上座)
名刺交換:相手の分身と思って両手で丁寧に扱う。トランプのカードのように投げない。
丁寧にコメント:基本的に全部読む。書き込みは表ではなく裏に書くと良い
服装(特に初回):スーツ+ネクタイ(夏は不要)+革靴(引きずって歩かないこと)
時間厳守(15分前)、遅刻=即失格
その他
武士道・系列文化理解
発言しない人・遅れてくる人が実はキーパーソンの場合あり
コソコソ話が多いので、書記役は聞き漏らさないように。
13. 会食(良いサイン)
着席:同人数ずつのフォーマルなら側を分ける。多少インフォーマルなら、ミックスOK
スタイル:床への着座会場は避けてもらい、椅子席を希望すること
(アメリカ人はほぼ間違いなくお腹が出ているのでアグラを組めない)
食器:殆どの場合箸
洋食器の時はフォークを利き手に持ち替えないこと。両手はテーブルの上。肘付きは厳禁。
大概の日本人はスープなどはすするので、音には我慢すること。気を使ってくれる場合はベター。
寿司:活き造りや踊りは宗教的に敬遠したければ手を付ける必要なし
喫煙:都市部では禁煙文化が広がっているが、地方では喫煙者が居ることも
アルコールが駄目でも、最近は良しとされる。
14. 二次会(かなり良いサイン・親睦が図られた証拠)
関係が深くなると、二次会になる。無理に行かなくても良い
カラオケなどが主流なので音痴でも構わず大声で歌えば良い
15. 手土産(オプション)
無理に用意する必要はない。
むしろサンプルなどのほうが喜ばれる。
相手からの手土産がある場合があるのでうやうやしく頂く。
16. モメンタム:継続の極意
次回までのアクションや予定を決めておく
予定が決められない場合はクォリファイされなかった可能性が高い
17. 最後に
顧客に投資してもらうなどの戦略的な関係を築きましょう。
投資家に対しては一度くらいの失敗ピッチで諦めない。
話し方、訴求力、社会インパクト、スケーリング・プランなどリファインしながら何度でも挑戦する。
Pelotonの社長は400回のピッチでパトロン獲得。ユーグレナの出雲社長は460回で支援獲得。
シードラウンドでは、ビジネスモデルやコンセプトがいかがわしいと思われる場合が多いので、100回以上は覚悟。
シリーズAになると、理解者が増えるものの、それでも数十回は必要。
CEOは営業をしながら金集めが主体になるので、COOやCFOが会社を回してゆかねばならない。
シリーズAが終わると、シリーズBに向けたスケーリングとスピード感が求められ、営業の充実や、人事・経理の間接部門拡張が必要。
固定費の増加や、流通在庫額に注意。注文を突然止められ、不渡りを出したら一巻の終わり。
新しい人が入ってくると、価値観が全く違うので、真摯な企業文化づくりも求められる。
投資先・融資先が決まったら、安心しないで次のパトロン探しに走る。
売上や利益目標はパートナー企業の5%以上を5年以内実現を目指す。
MBOやオープンドアポリシーなど、ミレニアム・Z世代とも話ができる社風を築き上げ、社会貢献に邁進しましょう。
